明治時代に建てられた築100年の蔵を取り壊して、新しい家を建てたいというご相談がありました。伺ってみると、切り妻屋根に瓦が乗り、外壁を銅板で葺かれた、立派な佇まいの2階建ての建物でした。内部は古い家の独特の臭いがしましたが、どっしりとした家の存在感に、圧倒されました。
硬く踏みしめられた版築の土間、30cmの厚さがある土壁、大屋根を支える松の梁。自然の恵みによって築き上げられた空間には、程よい湿度と温度が保たれています。
先人達が残した築100年の蔵を、後世に残すことは、今を生きる私たちに求められる大切な役割だと感じました。その想いは、建て主のご家族をはじめ、親族のみなさんにも共感いただけ、ました。築100年の蔵を、再生して、後世に繋いでいこう! 取り壊しをせずに、リノベーションとして、蔵を蘇らせることを託されました。
一番の課題は光でした。蔵の中は日中でも暗く、照明を着けないと、歩くことも容易ではありません。そこで屋根面にガラスの天窓を設けました。屋根からの採光は、壁面の窓に比べて3倍も明るいのです。天窓の設置により、2階は劇的に明るくなりました。2階の明るさを1階にまで導くために、2階の床の一部を撤去して、強化ガラスを設置しました。もちろん歩いても問題ありません。1階の寝室と子供部屋にも、太陽の光を届けることができたのです。
2階の明るさを1階にまで導くために、2階の床の一部を撤去して、強化ガラスを設置しました。